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コラム 解説

「キロワット」と「キロワット時」 (3)
〜 設備利用率で考える 〜

風力発電の場合も出力が変動します。強風時の場合P(t)は最大になり、凪の場合0になります。また最大出力を越す大風の場合、風力発電施設は損壊を回避するため停止させます。設備利用率に換算すると設備利用率は陸上風力発電施設の場合0.2程度、実験によると日本の洋上風力発電の場合設備利用率は0.3程度だと見積もられています。ヨーロッパの場合は洋上風力発電施設の施設利用率は0.4程度に見積もられていて、日本の場合とは地形や気候などの違いがあり、同じ定格電力の設備であっても、当然ですが、同じ電力量を産出しません。

本連載のその(1)で取り上げた、

という、風力発電設備と原子力発電所の定格電力を直接比較していた経済新聞の記事は、設備利用率を無視した記事です。

次に火力発電所の状態を見てみましょう。図 3-3に火力発電所の出力の変動状態の模式図を示します。

図 3-3 火力発電所の場合の電力[kW]と電力量[kWh]の関係。縦軸は火力発電所がある瞬間生産した電力。電力量は水色の領域の面積.

昼間は工場の稼働が盛んになったり、更に真夏の日中には冷房装置を利用したりして多量の電力を消費します。電力ネットワークでは、常に電力の消費と生産が同じになるように発電を制御しなければなりません。風力や太陽光の場合、発電電力は人為的に制御できません。また原子力の場合も、日本では通常は出力一定で発電しています。火力発電では出力を容易に人為的に制御することが可能です。火力発電所は電力ネットワークの中で重要な役目を担っています。図3-3のグラフは図3-2と似ていてどちらも変動していますが、大きな違いがあります。図3-3の発電電力の制御は人為的に行われ、図3-2の発電電力の変動は人為的ではないことです。火力発電所の場合、設備利用率は人為的に制御することは可能ですが、経済性を最重要視し結果的に通常0.8程度で運営されています。

再生可能エネルギーが増大しつつある電力ネットワークの中では揚水発電所が特に重要な施設になってきています。揚水発電所は巨大な蓄電設備の機能を果たしていて、太陽光、風力などの出力変動の吸収に役立っています。

さきにも述べましたが、電力ネットワークでは電力の生産と消費を常に同じに保たなければなりません。出力が変動する再生可能エネルギーによる電力の生産が増えると、これらの電力が余剰の時には吸収し、不足時には電力を放出する、大容量の蓄電設備が必要になります。かつて揚水発電所は原子力発電所の夜間余剰電力の吸収に利用されていましたが、近年では、揚水発電施設は再生可能エネルギーによる発電と表裏一体になりつつあり、位置付けが変わってきています。

以上、電力ネットワークに繋がっている発電施設の定格出力を比較しても、それらは単純には比較ではないことが理解できたと思います。それぞれの発電設備での大雑把な設備利用率を表にまとめます。

この連載その(3)では、電力と電力量の違いの観点から各発電方式の違いについて述べました。太陽光、風力などの再生可能エネルギーは国産エネルギーという観点からは重要ですが、出力変動を伴っており、蓄電設備の導入などが必要です。火力発電は電力ネットワーク上で大変重要な位置を占めていますが、燃料は輸入されていて、運営は経済、国際問題などに強く依存しています。また環境負荷の問題を抱えています。技術革新によってこれらの問題は軽減される可能性はあります。原子力発電は、蓄積している放射性廃棄物の問題をどうするのかについて、まだ解決されていません。また、事故を起こすと大きな環境負荷や経済損失等を引き起こすことはすでに知られています。

この連載その(2)で言及しましたが、電力の生産と消費は常に同じになるように発電を制御しています。この電力の生産と消費のバランスが壊れるとどうなるのかを連載その(4)で解説します。

(つづく)

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