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コラム 解説

SiCのフランク型積層欠陥 (2)
〜 ショックレー型積層欠陥の記述について 〜

連載“その(1)”で示された積層の記述の仕方で下側から上方向に四面体の積層の状態を見て行くことにします。B/A→C’/Aの変位がどのように起こっているのか考察します。[0001]方向から見てB-siteの最近接のC’-siteは、[1100], [1010], [0110]の方向に存在しているので、B→C’の変位の可能な方向は、それぞれb=1/3[1100], 1/3[1010],1/3[0110]の3種類と考えることができます。この変位を起こしている層のみを簡単なイラストで図2-5(a),(b),(c)に示します。ショックレー型部分転位の方向は[1120]に仮定し、積層欠陥部を右側、[1100]側に設定しておきます。これらの変位はB層の四面体の変形によって発生しています。B層の四面体の底面の隅に位置している3つのC原子は変位せず、四面体の中心位置のSi原子と、それに繋がっている四面体頂点のC原子がバーガース・ベクトルに従って変位しています。四面体中心位置のSi原子と四面体頂点のC原子が変位するので四面体の向きが変わります。つまりプライム無しからプライム付きに変わります。

実際の結晶では、ショックレー型部分転位の近傍の数ミクロンの広い範囲で四面体の形状が歪んでいますが、このイラストでは、ショックレー型部分転位の第1近接くらいの範囲の四面体が弾性的に歪んだような図を描いています。弾性的に歪んだ四面体にはアルファベットの下にバーを加えて示しています。破線のBサイトの四面体が再近接のC’-siteの四面体に変位したように描いています。右に稜線を持つ四面体Bから左に稜線を持つプライム付きの四面体C’に変位しているところを図示しています。

図2-5(a) B/A→C’/Aのショックレー変位の一例。b=1/3[1100]のショックレー型部分転位の模式図。赤矢印は変位の方向を表現している。赤矢印はショックレー型部分転位のバーガース・ベクトルの方向と同じ。緑色破線の四面体が赤矢印に従って黄色四面体に変位した状態を示します。バーガース・ベクトルが転位の向きに沿って左を向いているのでSiコア部分転位の状態を示しています。
図2-5(b) B/A→C’/Aのショックレー変位の一例。b=1/3[1010]のショックレー型部分転位の模式図。赤矢印はショックレー型部分転位のバーガース・ベクトルの方向と同じ。緑色破線の四面体が赤矢印に従って黄色四面体に変位した状態を示します。この図はb=1/3[1120]の基底面転位が分解した時に現れるCコア混合ショックレー型部分転位の構造。
図2-5(c) B/A→C’/Aのショックレー変位の一例。b=1/3[0110]のショックレー型部分転位の模式図。この図はb=1/3[1120]の基底面転位が分解した時に現れるCコア部分転位の構造。

図2-5(a),(b),(c)はB/A→C’/Aのショックレー型部分転位がどのようにイラストで簡単化して説明できるかを示した図です。同じ、B/A→C’/Aのショックレー型部分転位でもバーガース・ベクトルの違いで、変位と変形の仕方が異なることがわかります。また、変位を起こしている層の四面体が弾性的に変形しています。このB/A→C’/Aのショックレー部分転位のコア構造の模式図では、下側の四面体のA層は剛性体とみなし、BとC’の四面体が弾性的に変形している模式図を描いています。実際には、A層も弾性的に変形しているはずです。このようなことが考慮されておらず、図2-5で示されている構造は簡単化された状態を模式図として示しています。

以上、4H-SiCの四面体層を、A層、B層、…と記述し、それらのアルファベットのノーテーションを使って積層欠陥や部分転位のコア構造を表示すると、記述が簡単で理解しやすいという長所がありますが、一方で、下側から上方向へ見ていく場合と、上側から下方向へ見ていく場合では一見異なる積層構造であるかのような表記になってしまうこと、また部分転位のコア構造などを記述する際には実際には格子歪みが存在している層について格子歪みの記述が無いように表現されていることが短所として現れています。

このようなことを理解した上で、この積層の記述のルールを使ってフランク型部分転位の構造を考察したいと思います。考察は次回に続きます。

(つづく)

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