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コラム 解説

SiCのフランク型積層欠陥 (3)
〜 4H-SiCの欠損したフランク型積層欠陥 〜

このフランク型積層欠陥を作成する操作を具体的に見ます。図3-5(a)では格子欠陥の無い完全結晶のABA’C’の積層状態のB-siteの四面体層を取り除いた状態を示します。この取り除いたBの上下の層はAとA‘-site層ですが、この2の層は積層することはできません。下側のA-siteをB’-siteへショックレー変位させると、このB’層は、その上のA’ 層とも積層可能なので、これでフランク型積層欠陥を形成することができます。図3-5(b)はABA’C’の積層状態のAの四面体層を取り除き、その上にあるB-site層をB’へショックレー変位させると、上の結晶と下の結晶を繋ぐことができます。図3-5(a), (b)はそれぞれ、B層を消去した状態、A層を消去した状態ですが、出来上がったフランク型積層欠陥は同じ積層構造を示します。つまり、どちらもA’C’B’A’C’の積層構造を示します。またプライムの付いた四面体層が5層連続します。

図3-5(a) B-site層を消去して、その下側のA層にショックレー変位を与えて作ったフランク型積層欠陥。(b) A-site層を消去してその上側のB層にショックレー変位を与えて作ったフランク型積層欠陥。

図3-5(a)では積層欠陥から1層以上離れた上下の層、例えば、赤文字で示している各層は(x,y)平面の位置はガッチリと固定されています。このことより、このフランクの部分転位の変位ベクトルにはショックレー変位成分はないことがわかります。これを理解しやすいように、図3-5(a)の具体的なモデル図を図3-6に示します。この図3-6ではこのフランク型部分転位のバーガース回路を矢印で示しています。バーガース回路は各四面体の稜線に沿って描いています。x軸方向は図の右方向、y軸方向は紙面に垂直で、紙面の奥方向に設定します。z軸方向は図の上方向に設定しています。各四面体は部分転位より離れていて、歪んでいないと想定します。3次元で考察すると、L、M、N、Oの各点は同じy座標に設定することができます。図中のM点からN点の経路は完全結晶の1unit-cellのc軸長の経路なので、M点とN点は同じ座標成分(x1,y1)に設定することができます。また、O点とL点も同じ座標成分(x2,y1)に設定することができます。図ではA-siteの四面体層が途中でB’の四面体層にショックレー変位を起こしています。このA/C’→B’/Cのショックレー変位の仕方には3種類の方向への変位が考えられます。それらの変位は1/3[1100], 1/3[1010],1/3[0110]の3種類です。これらのいずれの変位もL、M、N、Oの座標を変えません。図3-6のバーガース回路を無欠陥の完全結晶へ持って行き、そこでこのバーガース回路を描くと、このフランク型部分転位のバーガース・ベクトル; c/4[0001]を求めることができて、最終的にはショックレー変位成分はないという結論になります。

図3-6 Bの層を消去してその下側のA層にショックレー変位を与えてB’に変位させ作ったフランク型部分転位の周りのバーガース回路のモデル。フランク型部分転位の方向は紙面の奥方向と設定すると b= -1/4[0001]になる。

図3-5図3-6ではABA’C’の積層の完全結晶のAまたはB-site層を消去して、その層の直下の層か、あるいは直上の層のみにショックレー変位を与えて上下の結晶を繋げると、フランク型部分転位のバーガース・ベクトルにショックレー変位成分はなくなり、b=1/4[0001]になることを考察しました。そして面白いことに、A層を消去した場合と、B層を消去した場合とでは、消去した四面体層が異なるので、それぞれのフランク型部分転位のコア構造は異なりますが、図3-5(a)(b)で示されたように、フランク型積層欠陥をまたいだ積層の順番はどちらも、A’C’B’A’C’と同じになります。プライム付きの四面体層が5層続きます。積層欠陥の周りの積層構造のみを見ると、A層が消去されてもB層が消去された場合でも、同じ積層の順番になります。

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