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コラム 解説

SiCのフランク型積層欠陥 (5)
〜 ショックレー変位を伴う欠損したフランク型部分転位の構造2 〜

積層の状態を下から上方向に見ていった場合と、同じ積層構造を上から下方向に見ていった場合では、ノーテーションの付け方が異なるという話を連載“その(2)”でしました。また、実際には格子歪みが加わっているにもかかわらず、それらがうまく表現されていないという話も、連載“その(2)”でしました。これらのことを考慮して、フランク型部分転位部でのショックレー変位の考察を進めます。

四面体層が平行移動する場合のフランク型部分転位の構造

図5-3左の図は欠陥のない4H-SiCの構造を示しています。 (f)(l)の図の赤い破線は消去された四面体B層の位置を示しています。(f)は下から上側に向かって積層を記述した場合の積層の順番を付けています。完全結晶の赤文字の四面体B層を消去して、その上のA’層にC’層への変位を与えて作成したフランク型積層欠陥です。A’層からC’層への変位に伴いこのC’層の上側の積層も同様に平行移動しています。消去したB層の直下のA層には変位を与えていないので、A層はそのままです。(l)は完全結晶の赤文字のB層を消去して、その下のA層をB層に変位させ、その変位に伴いこのB層より下側の全ての四面体層を同様に変位させています。また、消去層の直上のA’層はそのままです。積層欠陥の上側の結晶では、上から下方向に向かってC’A’BAの順番で表記しています。 (f)の図のアルファベットのノーテーションをA→B、B→C、C→Aと書き替えると(l)のアルファベットのノーテーションになります。この操作はこの欠陥構造を記述する際に下側基準で符号をつけたものを上側基準へ変換する操作です。

図5-3 左の図は欠陥のない4H-SiCの構造。(f) BA’→C‘は下から上側に向かって積層を記述した場合の積層の構造。(l) 2BA→Bは上から下側に向かって積層を記述した場合の積層の構造。赤い破線は消去された四面体B層の位置。

このことより(f)(l)は同じ積層の構造だとわかります。この積層の順番はフランク型積層欠陥の周りの構造です。 (f)(l)は同じ積層の構造になっていて、完全結晶より消去した四面体B層の位置も同じなので、このフランク型積層欠陥の縁に付随するフランク型部分転位のコア構造は同じ構造だと考えます。

(f)の場合、消去層の直上の層には“プライム付き”A‘から“プライム付き”C’に平行移動するショックレー変位を与え、消去層の直下のA層には変位を与えていないモデルです。部分転位部では実際には消去層の直下のA層には歪みが存在し変位しています。(l) の場合、消去層の直上のA‘層は変位していませんが、消去層の直下の層にはプライム無しAからプライム無しBへ平行移動するショックレー変位を与えるモデルです。実際には部分転位部では歪みが存在していて、消去層の直上のA’層も変位し歪んでいるはずです。実際の部分転位のコア部分では、消去した四面体層の直下の層と直上の層の両方が変位し、両層の変位を考慮すると、全体で一つのショックレー変位と同じ長さと方向の変位だと考えられます。

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