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コラム 解説

SiCのフランク型積層欠陥 (5)
〜 ショックレー変位を伴う欠損したフランク型部分転位の構造2 〜

次に、図5-3の(f)で示されているA’→C’の平行移動的なショックレー変位を[0001]方向から見てみましょう。図5-4はこの変位を模式的に示しています。この変位は3次元的な変位の2次元成分のみを示しています。A’→C’のショックレー変位は[1100]、[0110]、[1010]の3方向で変位が可能です。図5-4(a)では[1100]方向に変位した状態を示します。フランク型部分転位部の周りでは四面体が弾性変形し延伸しています。図5-4(b)では[0110]方向へ、図5-4(c)では[1010]方向への変位を示します。これらの図で示されている変位は、連載その(2)の図2-5で示されているショックレー型部分転位の周りの構造とはかなり異なっています。図2-5では四面体の向きの反転が発生していますが、図5-4では反転は発生せず平行移動的に変位し、弾性的に変形しています。

図5-4ではショックレー変位は赤い矢印で示しています。図5-3の(f)のA’→C’のショックレー変位は下の四面体層Aはガッチリと固定されたモデルです。消去した層の下側の層は、(l)2BA→Bで示されているように、A→Bの変位と表現される変位を伴っていて、両方合わせて1つのショックレー変位になっていると実際の構造では考えられます。しかしながら図5-4では変位の状態を理解しやすいように、変位を全てA’→C’の変位で表現して、模式的に示しています。本来は、消去した層の上下の層で同じ程度変位している事を想定すると、図5-4で示されている変位の半分程度が実際の変位だと推察されます。また、図では弾性変形した四面体はアンダーバーのノーテーションをつけています。四面体が弾性変形する領域は、フランク型部分転位の再近接領域のみ図では示していますが、実際にはミクロンオーダーの大きさの領域で四面体の弾性変形は発生しています。

図5-4 (f)2BA’→C‘でのA’→C’の変位の具体的な例。3次元的な変位を2次元平面に投影した図。(a)フランク型部分転位のバーガース・ベクトルの基底面成分が[1100]の場合。(b)フランク型部分転位のバーガース・ベクトルの基底面成分が[0110]の場合。(c) フランク型部分転位のバーガース・ベクトルの基底面成分が[1010]の場合。変形した四面体にはアンダーバーを付けている。破線の三角形は変位前の四面体位置。赤矢印は変位を示す。

(f)2BA’→C‘でのA’→C’の変位は実際には3次元的な変位なので、この変位のc軸方向の変位を考察します。図5-5(a)(b)はこの(f)2BA’→Cの変位を[1120]方向から見た模式図です。図5-5(a)ではc軸方向の変位を無視した模式図で、A’→C’の変位で四面体が少し圧縮された状態を示しています。これは、図5-4(b) または(c)の変位を想定しています。図5-5(b)はc軸方向の変位を考慮した模式図です。(f)2BA’→C‘の積層のモデルだと、消去したB層の下側のA層はガッチリと固定されたモデルで、変位するのは消去したB層の上側のA’層のみなので、図の右側では変位したC’層はc/4だけ下方向へ変位するのですが、この図ではc/8だけ変位させて、実際の変形に近い状態の模式図を描いています。図5-5(c)は(l)2BA→Bの積層モデルでの消去したB層の直化にある層のA→Bの変位層のc軸方向の変位の模式図です。(l)2BA→Bの場合、上のA’層はガッチリと固定されいるので、A→Bの変位に伴ってc/4だけ上方向へ変位するモデルですが、この図ではc/8だけ変位させて、実際の変形に近い状態の模式図を描いています。消去したB層の上下の層の変位を合わせて、c/4だけ変位したような模式図を示しています。

図 5-5(a) [1120]方向から見たA’→C’の変位の例。 (f)2BA’→C‘のフランク型部分転位で発生する変位の模式図。c軸方向の変位は考慮していない状態。(b)四面体層の右半分をc/8だけ下側に変位させた模式図。右部分はフランク型積層欠陥部。(c)   (l) 2B A→Bのフランク型部分転位でのA→Bの変位のc軸方向の変位の模式図。四面体層の右半分をc/8だけ上側に変位させた模式図。

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