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コラム 解説

放射光トポグラフ法の利用 (5)
〜 4H-SiCの基底面転位の観察 〜

図5-2 g=1128の回折条件での、b=1/3[1120]の基底面転位のコントラスト。

図5-2(a)は転位の向きξとバーガース・ベクトルbが平行な場合の基底面らせん転位のコントラストです。転位に沿って非対称なコントラストを示し、左側が明るく、右側が暗いコントラストを示します。これらのコントラストは図4-3(a)の”D“や図5-1(a)の転位の半ループの基底面らせん転位部”C”で見たとおりのコントラストです。図5-2(b) は転位の向きξとバーガース・ベクトルbが反平行な場合の基底面らせん転位のコントラストです。ξ = [1(-)1(-)20]、b=1/3[1120]のらせん転位の周りの剪断歪みの状態は、ξ = [1120]、b=1/3[1120]のらせん転位の周りの剪断歪みと同一です。ξ = [1120]、b=1/3 [1120]のらせん転位のコントラストはすでに図4-3(a)の転位ABで見ています。従って、図5-2 (b)図4-3(a)の転位A Bと同じコントラストです。図5-2 (a)(b)は基底面らせん転位のコントラストですが、左右の非対称コントラストは逆転して現れています。転位に沿った剪断ひずみの向きが逆になったからだと推察可能です。また、g=1128の場合は、バーガース・ベクトルと転位の向きが平行な基底面らせん転位のコントラストは図5-2(b)のコントラストになることはすぐに想像のつくことです。同様にg=1128の場合、バーガース・ベクトルと転位の向きが反平行な基底面らせん転位のコントラストは図5-2 (a)と同じコントラストを示します。このことは実験的に図4-35-1で観察されています。g=1128の場合とg=1128の場合では基底面に投影したgベクトルの向きが逆向きになってしまい、このgベクトルの向きに対して、各基底面らせん転位の周りの剪断歪みの向きが逆向きになるのでコントラストの逆転が起こると考えられます。

図5-2(c)(d)はそれぞれ基底面Siコア刃状転位、基底面Cコア刃状転位の模式図です。転位に沿って対称なコントラストが観察されます。Siコア刃状転位、Cコア刃状転位の場合転位に沿って歪みは対称的に存在しているので、コントラストも対称的なコントラストが現れています。我々が用いている反射g=1128の場合、逆格子ベクトルのc軸方向成分が大きく、これらの刃状転位のコントラストに大きな違いを与えているのは、上凸、下凸の基底面の曲がりによる歪みだと推察されます。

Siコア刃状転位の場合白いコントラストの周りに、少し暗めの縁どりがついていますが、結晶の深い位置に横たわっている時にはコントラス全体が弱くなって、この縁取りは見えにくくなることが実験的に確認されています。また暗いCコア刃状転位も明るいコントラストの縁どりが示されていますが、この縁どりも深い位置の転位では観察されにくくなります。

図5-2で取り扱っている基底面転位は、完全転位のループを想定しています。実際には小さな積層欠陥を伴った部分転位に分解しているのですが、トポグラフ像では、この分解が観察されないときは、ほぼ完全転位であるとみなして良いように思います。図5-2(a)(c)との中間状態の混合転位の場合、図5-1(a)で観察することができるように図5-2(a)(c)のコントラスト成分を足し合わせたようなコントラストが観察されます。他の混合転位もそれぞれ基底面らせん転位のコントラスト成分と基底面刃状転位のコントラスト成分を足しわせたようなコントラストを示します。ちなみに図5-1(c)は、基底面らせん転位の歪みコントラストが消失して、基底面刃状転位成分の歪み成分によるコントラストが見えていると考えられます。一度、図5-2のように整理することができれば、これを活用すると観察される転位のバーガース・ベクトルや、基底面らせん転位、基底面Cコア刃状転位、基底面Siコア転位の同定が容易になります。

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