〜 イノベイティブな半導体、エレクトロニクス、エネルギー技術のソルーション 〜

Innovative Semiconductors, Electronics, & Energy Solutions

クローズドループ方式の地熱発電 (2)
〜 掘削技術の進展、同軸型熱交換器、導入に関する考察 〜

3-4. セラフィエナジー社のセラフィウェル

セラフィエナジー社(CeraPhi Energy)は2020年イギリスに設立されたスタートアップ企業です13。ノフォークシャー、グレートヤーマス(Great Yarmouth)に本部があります。地熱技術の企業ですが、創業者は石油ガス田開発関係者で、廃井や休眠になったガス井戸や油井戸の再利用を事業の柱の一つにしています。2022年に、ネットゼロテクノロジーセンター(NZTC)から資金援助を受けています。NZTCとは温室効果ガスの排出と吸収の総和がゼロになる産業の実現に向けた活動に資金援助するイギリスの団体です。イギリス政府と産業界が資金を提供しています。

セラフィエナジー社は2023年にサードエナジー社(Third Energy)を買収しました。サードエナジー社は北ヨークシャーで10数ヶ所のガス井を保有していた小規模の企業です。ガス採掘の目的でフラッキングを行うことを計画していましたが、イギリス全土を巻き込むフラッキング反対運動が発生し、計画を中止しました。そして、サードエナジー社は経営困難な状態になっていたようです。フラッキング(水圧破砕)とは地下の深い岩盤層に裂け目を作る作業です。

セラフィエナジー社はサードエナジー社が保有していたカービーミスパートン(Kirby Misperton)にある開発中止になっていたガス井 Kirby Misperton-8(KM-8)を使って、DCHE型クローズドループ熱交換器の実験を2023~2024年の間、行なっています14。セラフィエナジー社は彼らの縦型同軸熱交換器をセラフィウエル(CeraPhiwell)と名付けています。KM-8にセラフィウエルを挿入して実験を行いました。セラフィウエルの最深部は3000mで、この深度での温度は110℃程度でした。地表に戻ってくる水温は90℃でした。インターネットのビデオで見る限り、外見上、セラフィウエルは改善する余地があるかのような作りです。しかしながら、これは設備のコストを安く仕上げるという点では優位点なのかもしれません。

このプロジェクトでは8週間連続運転を行い、ループ内流体の温度・流量・熱回収量を継続測定し、基礎データーを採取しました。彼らはループ内流体の温度・流量・熱回収量などを測定する統合化した実験計測装備及び地上設備一式をセラフィTRU(thermal response unit: TRU)との名称をつけています。このKM-8の実験施設くらいの規模では約 400 世帯に 40 年間温水を供給できるレベルだと彼らは評価しています。これは楽観的な見積のようにも思います。この実験結果をもとに、このセラフィウエルの用途として、地域の暖房、地域の農業施設の暖房、産業施設への熱の提供などを提案しています。彼らは、セラフィウエルに置き換え可能な油・ガス井がイギリス全土で680ヶ所あると主張しています。セラフィウエルは、枯渇・老朽化などで休眠状態の油・ガス井に設置可能なように設計されているということは特徴の一つとしているようです。KM-8のプロジェクト後、この実験結果の精査分析を継続中のようです。セラフィエナジー社は旧サードエナジー社が保有していた10ヶ所ほどのガス井の暖房用の給湯センター化のような方向を検討しているようです。

セラフィエナジー社のウエブサイトにある同社のニュースを見ると、北リンカーンシャーのスカンソープ総合病院 (Scunthorpe general hospital) と、セラフィエナジー社は昨年2025年11月に、暖房設備の設置で契約を行なったとの記事が載っています15。この総合病院は、北リンカーンシャーとイギリスのNHS財団により運営されている大きな総合病院のようです。すでに存在している立坑にセラフィウエルを設置し、同総合病院の暖房施設を作るようです。この地熱設備は商業的なプロジェクトのようですが、熱の出力が小さく小規模な設備に分類されると思います。

セラフィエナジー社は、暖房施設の設置に向いているようです。セラフィウエルは、コストを抑えた作りのように見えると述べました。大容量のエネルギーを取り扱うというより、小規模の分散エネルギー源を想定し、製作コストを抑えた設置を目指しているようです。セラフィエナジー社のウエブサイトを見ると、一般論として地熱発電建設を目標にしてはいますが、休眠状態の油・ガス井の再利用を考える場合、暖房施設の建設は油・ガス井の再利用の適切な形態と考えているのかもしれません。

誤解されないために、蛇足的な説明を加えると、日本でも既存のオープン方式の地熱発電所の近隣への暖房、給湯、融雪などを目的として温水供給している施設はいくつかあるようです。このセラフィエナジー社の文章はクローズドループ方式の現状を整理し熱エネルギーがどういう使われ方をしているのかを説明している文章です。暖房給湯をどこの誰が初めて行ったかという話をしているのではありません。

以上、坑井内同軸熱交換器 (DCHE) に分類されるクローズドループの地熱設備の開発状況について整理してみました。日本のJNECの水分発電所は2010年代ですが、GFE社やセラフィエナジー社のプロジェクトは2020年代に行われています。これらは実証実験、デモンストレーション的な色彩のプロジェクトで、データー採取のための実験という位置づけだと思われます。

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