A I-Aの返答
- 所得計算書の記載方法の根拠は、「第22 有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書(同合計表)」(国税庁:申告書記載要領)にある次の記載。
(7) 「資産・負債」の各欄については、次により記載すること。
イ 資産欄には、流動資産、固定資産、繰延資産、累計損失及び累計分配金の各項目別に記載すること。
ロ 負債欄には、負債、出資金及び累計利益(累計損失がある場合には、資産欄に記載することとなります。)を記載すること。
- ここには、
「プラスで書け」
「絶対値で書け」
「累計分配金を資産に足せ」
「資産合計=持分+分配済み持分」
などの記述は 一切ありません。
- 国税庁は、どの項目をどこに書くかだけを示し、
符号(+/−)の扱い
資産合計の意味
持分との関係
については何も書いていません。つまり、「累計分配金をプラスで書く」という他A Iの主張は、国税庁の文書に根拠がないのです。
- 国税庁が符号を明示していないため、実務では会計の原則に従うのが唯一の整合的な方法です。
会計上:
累計損失はマイナスの資産(控除項目)
累計分配金も純資産の控除項目
これは LLP でも変わりません。したがって、計算書でも:
累計損失 → マイナス
累計分配金 → マイナス
として扱うのが会計的にも税務的にも自然です。
- 他A Iの主張は:
「累計分配金をプラスで書く」
「累計損失もプラスで書く」
「左右を絶対値で合わせる」
というものですが、これは:
会計の基本原則に反する
国税庁の文書にも書かれていない
計算書の目的(持分計算)とも整合しない
という三重の問題があります。特に致命的なのは:
▶ 分配すればするほど「資産合計」が増える
という逆転現象が起きること。これは 税務上も会計上も絶対に成立しません。
A I-Bの返答
- 所得計算書の記載方法の根拠は、「令和6年分 法定調書の作成及び提出の手引」 第22 有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書(同合計表).。
- 「加算」すべきであることの直接的記述(証拠):この手引の1ページ目(冊子の33ページ目)右側、「2 組合員所得に関する計算書の書き方」の「(7) 資産・負債」という項目に、以下の指示がはっきりと書かれています。
イ 資産欄には、流動資産、固定資産、繰延資産、累計損失及び累計分配金の各項目別に記載すること。
ここで重要なのは、「各項目別に記載すること」と指示されている点です。様式の最下部には「資産合計」欄がありますので、会計のルール上、「項目別に書かれた数字を単純に合算する」のが書類作成の原則です。
もし「資産合計」が(今ある財産)のみを指すのであれば、手引には「累計分配金などは内訳として記載し、合計には含めない」といった控除の指示が必要ですが、そのような指示は一切ありません。
- 「負債合計」との一致(バランス)による証明:同じ項目の「ロ」には以下の指示があります。
ロ 負債欄には、負債、出資金及び累計利益……を記載すること。
もし、資産合計を(現在残っている財産)だけで計算してしまうと、負債側にある「出資金(元本)」や「累計利益(稼いだ総額)」と金額が絶対に一致しません。
- 他のA Iの回答が異なった理由:多くのA Iは「資産合計 = 流動資産 + 固定資産 + 繰延資産」という、一般的な企業のB/S(貸借対照表)の定義を回答します。
しかし、LLP(有限責任事業組合)のこの報告書においては、「組合員が投入した資本が、今どのような状態(現金として残っているか、損失として消えたか、分配として手元に渡ったか)にあるか」という「持分の連続性」を報告することが目的です。
そのため、便宜上、「損失」や「分配金」を資産側に並べて加算させるという、非常に特殊な(会計学的には変則的な)報告形式を国税庁が指定しているのです。
上記の両AIの回答をみて、皆さんはどのような感想を抱かれるであろうか。私は「結局どちらなのか」と腕組みしてしまった。そこで、それぞれのA Iの今までの主張と反論をいったん机の上に広げ直し、改めて整理してみることにした。まず、「累計利益金」や「累計分配金」の記載額の正負であるが、A I-Aの立場では、会計学の原則に従って正負共にあり得るとし、それらを含むより大きな項目(本件の例では「資産」欄や「純資産」欄)の額を増えるものをプラス、減るものをマイナスと整理している。これと反対にA I-Bは税務上の書類としての見やすさと運用慣行を優先し、全ての額をプラスで表示したうえで実質的にマイナスの項目は別立ての項目で記載する(当然、その片方だけがゼロでない)方式を取っている。この方式は、他の税務関連の書類でも採用されているようであるが、両者は数字の中身だけでなく、「この書類を何として読むか」という前提からしてすでに少し違っているのである。
次に所得計算書の記載方法の根拠である。両者とも、参照している根拠法令自体はほぼ同じと見てよさそうだった。残念ながらA Iから示されたURLに自分でたどろうとしてもうまく開けない場面があり、少々もどかしい思いもしたのだが、少なくとも回答に出てくる記載内容には大きな差がない。そうすると、答えが割れた理由は根拠法令の違いではなく、そこに記載されている内容が不十分でその解釈に差が出ていると考えるほかない。その解釈の差は、A I-Bが「一般的な会計の感覚はいったん脇に置いて、国税庁の文書の形式に寄せる」立場を取っている一方、A I-Aは「形式よりも会計原則との整合性を優先する」立場を取っている、ということではないだろうか。その後、色んなツッコミや不備を指摘して細かい議論をふっかけた結果、ある程度はA I側も折れて、複数の選択肢を提示してくるようになった。それらの顛末の詳細まで書き始めると、それだけで別稿になりそうなので、ここではいったん結論に進みたい。







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